アマテラスの誕生―古代王権の源流を探る (岩波新書)

記紀におけるアマテラスの位置付けには、これまで不明瞭さを感じて来ただけに、この本の非常に明晰な分析には、とても感銘を受けた。大胆でありながら、緻密な論旨であり、且つ大変面白い。中心は、以下の3点となる。①南方文化の受容、多神教的世界、スサノオ・オオクニヌシ等②北方ユーラシア文化の受容、天孫降臨、皇祖神=タカミムスヒ③中国文化の受容、日本オリジナルの再発見、皇祖神=アマテラス日本書紀は上記①②を明確に分離して記述され、皇祖神は②③を併記している。古事記は①②を混合して記述され、皇祖神は③となる。これらが、歴史の流れの中で、どのような必然性から生じたのかを、丁寧に説いてくれる。とても判り易く、喜んで納得してしまう。この本は、記紀神話を理解する為の必読書である。