コヨーテたち―越境するヒスパニック・アメリカ

アメリカ人の若いジャーナリストが、働くためにアメリカに不法に越境するメキシコ人たちにくっ付いて旅を続けた記録。学術的な内容かなと思いきや、平易で具体的な表現で書かれたその文章は読みやすくぐいぐいと引き込まれる。自分はアメリカとメキシコの国境はかつて仕事や趣味で行き来したことがあり、この本の情景描写の見事さと相まって自分も旅をしている気分になった。そう、この本は読むとまさに旅をしている感覚に陥る「ロードノベル」とでもいうべきものだ。また著者はメキシコ人たちの故郷を訪れ、彼らの土地、親兄弟、妻子を知ることにより、彼らの越境行動についてより理解を深めることになる。読むとアメリカとメキシコのボーダーについて確実に理解が深まる。そして新しい世界観を体験することと思う。