全部抱きしめて (実業之日本社文庫)

前作では小説家に搔き乱されて、結局不倫の末、仕事も家も家族も失った奈津子であったが、諒に友達から始めょう、と復縁を持ちかけられるところから物語は始まる。全てを失って実家に帰った奈津子。潔癖な母親や実兄からも疎まれて、独り暮らしを余儀なくされる。唯一の理解者たる叔母の支援や、前職の人脈でなんとか食い繋ぐ事ができたが、ぽっかりと空いた穴は大きい。そこに諒が現れるわけであるが、やはりお互いが離れ難く、再び合体する。避妊したかどうかの描写が無かったのが残念。別れた娘も訪ねてくるのがほっこりした。元嫁ぎ先が冷淡なのは当然として、実家が以上に冷たくて突き放す様は考えさせられる。奈津子が母親に何も言い返さなかったのは残念。認めないなら葬式にも出ない、くらいの啖呵はきってほしかった。妊娠発覚は良かった。高齢出産になるが、それでも産む覚悟は素晴らしい。諒の本妻が押しかけて来たシーンは迫力がある。本妻の思考のズレは諒とは一生合わないだろうと思った。前作も良かったので、その続編が見られてとても良かった。くっついて終わり、だと消化不良だが、それだけではなく、妊娠出産までの苦労が描かれていてすっきりとした終わりになっていて良い。