戦国人物伝 北条早雲 (コミック版日本の歴史)

室町幕府の将軍継嗣問題に端を発した所謂「応仁の乱」により、京都は戦乱の渦となり焼け野原と化した。幕府の権威は大きく失墜し、騒乱は全国各地へ飛び火。ここから身分が下の者が上の者を打ち倒す「下克上」の世となる。美濃の斎藤道三と並び下克上の先駆けと称された北条早雲の出自については永らくはっきりしていなかったが、八代将軍「足利義政」の弟・義視の家臣である伊勢新九郎こそが後の早雲であるようだ。義視を連れて東国へと落ち延びたものの、義視は帰京してしまい反対する新九郎は任を解かれて浪人生活。妹が駿河国の今川家に嫁いでいた縁で食客となる。妹の産んだ氏親がまだ幼年のうちに父である今川義忠が死去し、今川家の家督相続争いを調停した。その功により領地を与えられた新九郎は関東に領土を広げていく。当時の関東は関東管領の上杉家が「山内」「扇谷」の二家に分かれて内乱の様相を呈していた。この両家の諍いに乗じて新九郎は勢力を伸ばしていく。彼が武将としてデビューしたのは50歳を超えてからであり、「人生50年」と謳われた世においては遅咲きであった。けれど彼は決して事を急がず、領土の民衆の負荷を軽減することに努め、自身の支持者を増やしていった。北条家は「風魔」と呼ばれる忍軍を抱えており、これが各地で諜報・工作活動を展開し早雲の耳となり目となった。また、後継者である長男の氏綱の育成にも尽力し、これが北条家が五代に渡って関東の覇者として君臨できた礎となった。彼はこの時代において88歳の長命を誇り、身体も頑強であった。これは特筆すべき点である。思うに彼は応仁の乱以降の全国の窮状をつぶさに自らの目で見てきており、戦乱のない世の中を作りたい気持ちは人一倍強かったと推察される。その気持ちが「関東に理想郷を作り上げよう」という気持ちに繋がり、彼の子々孫々に渡りその目的が追求されていくことになる。残念ながら曾孫の氏政の失態で北条家は滅亡するが、その想いは徳川家に引き継がれ後に260余年にも渡る江戸時代の礎となるのだ。早雲の理想は現代へもしっかりと引き継がれたということだ。